サイディングを塗装するときの注意点
鈴木良太【外壁塗装110番 代表】
幼少の頃、二世帯住宅に住んでいた祖母が悪徳業者に騙されたのをきっかけに外壁塗装110番を立ち上げました。累計20,000件を超えるお客様からの相談や、一級塗装技能士の資格を持つプロの職人に話を聞き、より正確な情報を掲載できるよう心掛けています。
宇野清隆【株式会社カルテット 代表】
職人暦20年、他の塗装店にも技術などを教えるプロ中のプロ。日本ペイント、アステック、その他の大手塗料メーカーから全国1位の実績と表彰。審査の厳しいホームプロでは、毎年顧客満足優良店に選ばれる。
児玉圭司【株式会社児玉塗装 代表】
名古屋市で地元のお客様に愛されて50年。児玉塗装の3代目。16歳の若さで塗装業入りし、趣味も特技も塗装。圧倒的な知識と技術でお客様からの満足度も高い。
サイディングを塗装するときに一番注意する点は、直張り工法か?通気工法か?という点です。なぜなら、直張り工法の場合は、塗装すると早期の剥がれが発生しやすいからです。また、サイディングの壁には弾性系の塗料は不向きです。
塗装業者の中にも、このようなことを知らずに塗装してしまう方もいますので、サイディングを塗装するときこそ業者選びに注意しなければなりません。
サイディングの塗装について説明する際、どうしても専門用語が出てきます。理解するのが難しい部分もあるかと思いますので、その場合は優良業者に建物を見てもらい診断してもらうことをオススメします。⇒ 優良業者へ相談する
窯業系サイディングは、現在の住宅の7~8割に使用されている外壁材です。
サイディング外壁を作る際は、工場で成形されたパネルを取り付けるだけなので、職人の技術に左右されるモルタルとは違って材料の量産が可能となり、費用も安いという特徴があります。さらに工期も短いので人件費も安く済み、結果として新築時の金額も安くなります。
サイディングの種類は、以下の4つあります。
・窯業(ようぎょう)系サイディング
・金属系サイディング
・木質系サイディング
・樹脂系サイディング
ここでは、一番使用されている窯業系サイディングについて説明します。
サイディングの劣化症状
次のような劣化症状が見られる場合は、塗り替えが必要です。
特に、ひび割れや塗膜の剥がれを放置していると、雨漏りやサイディング材自体の劣化に繋がるため、早急に対処することが重要です。
チョーキング現象
チョーキング現象とは、外壁を触ると手に白い粉がつく現象のことです。劣化の初期段階に現れる症状で、塗膜の性能が低下しているサインと言えます。
直ちに塗装が必要というわけではありませんが、放置していると塗膜の劣化が更に進行し、ひび割れや剥がれ等にも発展するため注意が必要です。
チョーキング現象の発生は、塗り替えを検討し始める時期と覚えておくようにしましょう。
コケや藻
コケや藻が発生するのは、塗膜の防水機能が低下している証拠です。
防水機能が完全に失われると外壁材に雨水が染み込んでしまい、サイディング材の腐食や雨漏りに繋がる恐れがあります。
コケや藻は美観が損なわれる原因にもなるため、状況が悪化する前に、早めにメンテナンスしておくことが大切です。
ひび割れ
塗膜のひび割れは、主に経年劣化によって発生します。放っておくと亀裂部分から雨水が浸入する恐れがあるので、注意が必要です。
また、サイディング材そのものが割れてしまうと、より雨漏りの危険性が高まるため、ひび割れを見つけた際は早急に補修・塗装を行うことが重要です。
塗膜の剥がれ
塗装を行う目的のひとつが、下地である外壁材を紫外線や雨風から守ることです。
しかし、塗膜に剥がれが生じている場合は、塗膜による保護機能や防水機能が失われている状態と言えるため、早急に塗り替えをして塗膜の性能を回復させる必要があります。
塗膜の剥がれを放置していると、サイディング材自体の劣化を早める原因になり、最終的に外壁材の腐食や雨漏りが発生してしまいます。
シーリングの劣化
サイディング外壁の場合、建材同士の継ぎ目である目地部分に、シーリングと呼ばれるゴム状の充填材が施されています。
このシーリングは、塗膜と同様に紫外線や雨風の影響によって劣化し、ひび割れや剥がれ、痩せといった症状を引き起こしてしまいます。そして、割れや剥がれを放置していると、生じた隙間から建物内部に雨水が入り込み、やがて雨漏りに発展します。
サイディングを塗り替える際は、シーリングの補修も一緒に行うのが一般的なので、シーリングの劣化を発見した時は塗装を実施するようにしましょう。
サイディングの耐用年数とメンテナンスの周期
一般的によく使用されている窯業系サイディングの場合、耐用年数は30年~40年程です。
また、サイディングは定期的な塗り替えが必要不可欠で、メンテナンスの周期は7~10年が目安となります。
ただし、メンテナンス時期や耐用年数は、立地条件や周囲の環境などによっても変わってきます。そのため、日頃から上記でご紹介した劣化症状を見逃さないようにすることが大切です。
サイディングを塗装するときの注意点
サイディングを塗装するときは、以下の点に注意しましょう。
注意点1 今のサイディングが直張り工法の場合は塗替えではなく張替え
サイディングの塗替えで一番注意しなければならないのは、今あるサイディングが通気工法か?直張り工法か?という点です。直張り工法の場合は、塗替えでなく張替えが推奨されています。失礼な言い方かもしれませんが、直張り工法は欠陥品です。
サイディングの張替単価(工事費込み)は、厚さにもよりますが
・窯業系サイディング:5,000~8,000円/m2
・ガルバニウム系サイディング:6,000~9,000円/m2 です。
サイディングが普及し始めた2000年は、まだ新しかったこともあり、外壁材メーカーもよくわからず直張り工法を推奨していました。
直張り工法の問題点は、胴緑がなく通気層もないことです。
直張り工法のサイディングに水分が入り込むとサイディング自体が湿って、やがて塗膜が日光で温められて柔らかくなり、最終的に水分が湿気となって蒸発する際に塗膜を押し上げてしまいます。
これにより塗料が膨れたり、剥がれたりするのです。そのため、塗替えではなく張替えが推奨されています。
この欠陥を解決するために、2000年4月以降は、品確法の標準工法として通気工法になりました。品確法とは、国土交通省が定めた住宅の品質確保の促進等に関する法律のことをいいます。
通気工法の場合は、このあと説明する注意点2「弾性系の塗料を使うのはNG」を気を付ければ、塗装をしても問題ありません。
注意点2 弾性系の塗料を使うのはNG
サイディングには以下の特徴があります。
・表面温度が高温になりやすい
・吸水性が高い
ここに、伸縮性のある弾性塗料を塗ると、表面が高温になった際に塗膜が熱で柔らかくなってしまい、サイディングが吸水した水分が蒸発するときに、柔らかくなった塗膜が押し上げられ、膨れ・剥がれが発生します。
サイディングには、基本的に断熱材などが入っており、表面が熱くなるのを抑えられるようにはなっていますが、夏場になるとどうしても高温になってしまうので、このような劣化現象が起きてしまいます。
以上の事から、サイディングの塗装では弾性系の伸びる塗料は使えません。
注意点3 シーリングの補修はしっかりしないと雨漏りなどの原因になる
サイディングには、繋ぎ目の部分にゴム状のシーリングが注入されています。シーリングは、コーキングとも言います。
シーリングは劣化するとヒビ割れや剥がれなどを引き起こすため、これらの劣化症状を放置したままにすると、雨水が入り込み内部が腐食したり、雨漏りの原因になる可能性があります。
そのため、シーリングが劣化している場合は、しっかりとした補修が必要です。補修方法には、シーリングの「打ち増し」と「打ち替え」の2通りあります。
種類 | 単価/m2 | 特徴 |
打ち増し | 600円前後 | 既存シーリングを撤去せずに、その上から新たなシーリング材を足して補修する方法 |
打ち替え | 1000円前後 | 現在あるコーキングを剥がしてから、新たにシーリング材を充填する方法 |
ここで注意点として、シーリングの打ち替えをする場合は、3面接着ではなく、2面接着にしないとヒビ割れの原因になります。
3面接着とは、シーリング材を目地底と側面の3面に接するように充填する方法で、2面接着は側面の2面のみに接するようにシーリング材を打ち込む方法です。
2面接着を行う場合は、目地底にボンドブレイカーという青色のテープを貼り、シーリング材が目地底に接着しないようにします。また最近では、ハットジョイナーという金具が付いていることがあるので、この場合はボンドブレイカーを使用しなくても2面接着になります。
注意点4 劣化が進むとクリヤー塗料は使えない
サイディングの模様をそのままに活かす為に、透明な塗料のクリヤー塗料で塗装を考えている方も多いです。しかし、サイディングが劣化しているとクリヤー塗料は使えません。
そのため、クリヤー塗装を検討している場合は、10年よりも少し早めに塗り替えを考えておいた方が無難です。
クリヤー塗装ができないときは、一般的な色付きの塗料で塗りつぶすか、2~3色で色分けして塗装する方法があります。ただし、2~3色で色分けは手間がかかるため、料金が高くなったり、業者によっては対応していないケースもあります。
サイディングを塗装するときの流れ
サイディングの塗り替えを行うときの流れは、次の通りです。
期間は、外壁塗装のみで1~2週間程です。屋根塗装もあわせて行う場合は、2~3週間程かかります。
1.足場・養生ネットの設置
足場の設置には、職人の安全性を確保したり、作業効率をアップさせる等の目的があります。
また、養生ネットは建物全体を覆うカバーのことで、塗料や高圧洗浄の水が周囲に飛び散るのを防ぐ役割があります。
2.高圧洗浄
塗装する前に、高圧洗浄機を使って古い塗膜や汚れ、ホコリ、カビなどを洗い流していきます。高圧洗浄が不十分だと、塗料の密着力が低下し、早期の剥がれに繋がってしまいます。
3.下地処理
下地処理には、いくつかの工程があり、主な作業内容として挙げられるのは、以下のようなものです。下地処理は工事の品質を左右する非常に重要な作業です。
ケレン
ケレンとは、紙ヤスリや電動工具を使って、高圧洗浄で取り除けなかった汚れやサビを除去したり、塗料が密着しやすいように塗装面を整える作業です。
クラック補修
ひび割れのことをクラックと言い、シーリング材で亀裂を埋めてひび割れを補修します。クラック補修を怠ると、塗装後にひび割れが再発する恐れがあります。
シーリング補修
サイディングの目地部分に充填されているシーリングを補修します。前述したように、シーリング補修には、打ち増しと打ち替えの2通りあり、状況に応じて適切な方法を選択します。
錆止め
鉄部など錆びが発生しやすい部分に、錆止めを塗装します。
4.養生
ここで行う養生とは、専用のテープやビニールなどを使用して、塗装が不要な部分を保護する作業のことを指します。
細部まで丁寧に養生することで、周囲の外壁や床が汚れるのを防止できます。
さらに、シーリングやサッシ周りに養生テープを貼ることによって、塗装する際に塗装した部分としていな部分の境目が綺麗な直線になり、工事の出来映えも格段に向上します。
5.下塗り・中塗り・上塗り
下地処理や養生が完了した後は、塗料を塗っていきます。基本的には、下塗り→中塗り→上塗りの3回塗りです。
下塗り塗料には、下地を整えたり、中塗り・上塗り塗料の密着性を高める接着剤のような役割があります。
そして、中塗り・上塗りで同じ塗料を2回重ね塗りすることにより、塗膜に一定の厚みを持たせることができ、塗料の本来の性能を十分に発揮できるようになります。
6.点検・足場解体・清掃
塗料をしっかりと乾燥させた後は、不備や塗り残しなどがないか仕上がりをチェックします。その際に不具合があった場合は、手直しをします。
点検が終了したら、足場の解体と清掃を行い、塗装工事終了です。
サイディングの塗装にかかる費用
サイディングの塗装費用は、30坪程度の戸建て住宅の場合、足場込みで60万円~120万円程が相場です。屋根塗装は含まれません。
また、費用は使用する塗料によって変動します。外壁塗装で使われる塗料の種類は、下記のグレードに分類されます。
グレード | 耐久年数 | ㎡あたりの単価 |
アクリル | 5~7年 | 1,400~1,600円 |
ウレタン | 8~10年 | 1,700~2,200円 |
シリコン | 10~15年 | 2,300~3,000円 |
ラジカル制御形 | 12~15年 | 2,500~3,000円 |
フッ素 | 15~20年 | 3,800~4,800円 |
光触媒 | 15~20年 | 4,200~5,000円 |
無機 | 20~25年 | 4,500~5,500円 |
まとめ
サイディングの塗装は、しっかりとした知識のある業者に依頼しないと、早期の剥がれや膨れに繋がる可能性があります。塗装業者とひとくくりに言っても、正しい知識を持っていない業者もいるので注意です。
塗装で失敗しないためにも「外壁塗装業者の選び方」を参考に、優良な業者を探せる知識を身に付けてください。